Friday, April 1, 2011

”Race to the Top"ーオバマ政権の教育改革の現状と課題











オバマ大統領は、今年125日の一般教書演説で、世界市場の競争に勝ち抜くための科学と数学教育の充実を掲げました。既に、オバマ政権は2009724日に米国再建・再投資法の一環として、“Race to the Top”という名の教育改革法を発表、約4350千万ドルの予算措置を講じました。この背景にはブッシュ政権によって進められてきた“No Child Left Behind”政策が期待していたような実績を上げてこなかったという事情がありました。加えて、世界における米国の競争力がこのままでは一層後退しかねず、トップを目指す教育に目標を変えることにより、公立学校教育に具体的な成果を上げたいとの強い意向がありました。そして、予算措置の割り当てとして、以下のような4つの分野に評価の大きな基準を置くことになりました。
  1. 生徒が大学や職場で成功し、かつグローバルな経済の中で競争できるのに必要な基準や評価の採用

  2. 生徒の進歩や成功を計測し、かつ教師や校長に改善のためのあり方を示すデータシステムの構築

  3. 最も有能な教師や校長が必要とされる学校で、そうした人材が採用、向上、報奨、かつ継続できること

  4. 学力の向上が最も少ない学校の改善への転換

この中で、最も重要と見られるのは2にある生徒の向上のデータと教える側の実績に結びつける評価システムの構築で、これによりインセンテイブ(報奨)とサンクション(処罰)を客観的にしようとするものでした。そして、連邦政府は全米の州政府に上記の4つの基準に基づいて、政府の財源を優先的に割り当てることを通知、約40の州政府が申請を行ないました。結果を見ますと、第一回ではデラウエアとテネシーの2州に対して総額6億ドルが、第2回ではワシントンDC、フロリダ、ジョージア、ハワイ、メリーランド、マサチュセッツ、ニューヨーク、ノースカロライナ、オハイオ、ロードアイランドの10州に対して総額3325百万ドルの財源が割り当てられました。なお、財源不足が著しいカリフォルニア州は第2回の最終選考には残ったものの、新たな教員評価の設定面で、教員組合側の十分な協力が得られなかったこともあり、財源の割り当てを受けるには至りませんでした。

しかしながら、オバマ政権の“Race to the Top”政策には、幾つかの批判が出ていることも事実です。一つは教員組合からのもので、州政府が本来行なうべき教員評価の方法について連邦政府が共通の基準を設けることは、州政府に対する連邦政府の介入になるのではないかと言う指摘です(実際には、教員組合が強く反対する理由は連邦政府が求める教員評価には改善のない教員の解雇を含んでいることがあげられています)。もう一つは評価基準の妥当性で、ある州知事は自分達の評価基準は連邦政府の評価基準より優れたものであり、基準を変更するわけにはいかないということを理由に挙げていました。また、伝統的に共和党の考えが強いテキサス州は、州の教育内容を連邦政府の新たな方針に支配されたくないとして、最初から申請を行いませんでした。これに加えて、生徒のレベルを上げるには学校や教員の意欲や努力を評価するシステムだけでは十分ではなく、家庭で保護者が子供の教育環境をどのように整えるかも重要ではないかとの指摘も出されています(但し、この点については、オバマ大統領も教育改革に関するスピーチにおいて常に強調しています)。

いずれにしましても、カリフォルニア、ニューヨーク、テキサスを含め、現在多くの州が財源難に陥っている時に、財源支援を伴なう連邦政府の新たな教育政策はそれを受け取った州政府には大きなプラスになります。しかし、その一方、連邦政府自体が深刻な財政危機にある状態では、オバマ政権の財源支援を伴う教育政策もそれが一時的なもので終わってしまうという問題もあります(オバマ政権は2012年度予算で、”Race tot the Top“の継続のために約1350千万ドルの予算措置を講じていますが、共和党が多数派となっている連邦下院の状況もあり、それが承認される見通しは不透明です)。現在、米国のどこの州においても、教育予算は福祉予算と並んで最大の支出項目となっていますが、経済の低迷から州の税収増が期待できない以上(カリフォル二ア州は、これに加えて、1978年の住民法案13によって不動産税引き上げの制約が重なり)、州政府自身が費用と投資効果に基づき、採算性を意識した教育制度改革を志向せざるを得ない状況にあるといえます。

201141日: 村方 清)

JIPANGU

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