Wednesday, February 1, 2012

教育予算削減が公立学校教育に与える影響













米国の多くの州で、財政赤字が深刻化する中で、教育予算の大幅な削減措置が取られるようになっています。これに関連して、昨年10月にCenter on Budget and Policy Prioritiesが全米の州における教育予算削減状況を調査した「New School Year Brings Steep Cuts in State Funding for Schools」という報告書を発表しました。この報告書の内容は以下の通りです。

1.教育予算削減の現状
(1)2011-12年度予算と2007-8年度予算の比較
A.データが集められた全米46州の中で、2011-12年度における生徒一人当たりの教育費が2007-8年度予算を下回ったのは37州で、特に減少幅が大きかったのはサウスカロライナ(24.1%)、アリゾナ(24.0%)、カリフォルニア(23.0%)、ハワイ(22.2%)、オクラホマ(18.7%)でした。
B.金額ベースで10%以上の減少があったのは17州で、特に減少額が大きかったのはカリフォルニア(1,414ドル)、ハワイ(1,175ドル)、ニューメキシコ(1,174ドル)、アラバマ(1,064ドル)、アリゾナ(845ドル)でした。

(2)2011-12年度予算と2010-11年度予算の比較
A.46州の中で、2011-12年度における生徒一人当たりの教育費が2010-11年度予算を下回ったのは37州で、特に減少幅が大きかったのはイリノイ(12.9%)、カンサス(10.4%)、テキサス(10.4%)、ウイスコンシン(10.0%)、ネブラスカ(9.7%)、カリフォルニア(9.3%)でした。
B.金額ベースで8%以上の減少があったのは9州で、特に減少額が大きかったのはニューメキシコ(707ドル)、ウイスコンシン(635ドル)、ニューヨーク(585ドル)、カンサス(561ドル)、カリフォルニア(484ドル)でした。

2.教育予算削減の原因
(1)税収の減少
2008年の金融不況の影響から、2011-12年度における州の所得税や売上税の減少が続く中で、多くの州は全体の予算を均衡化させるべく、歳出面での大きな項目である教育予算の削減を実行する結果になっています。
(2)コストの増加
コスト増加の最大要因は生徒数の増加で、2011-12年度の場合、幼稚部から高校までで26万人の増加、さらに公立大学では約150万人の増加が見込まれています。
(3)連邦政府の支援プログラムの継続困難
オバマ政権成立後に導入されたアメリカ再建・再投資法に基づく州財政均衡基金から390億ドルが(いわゆる“Race to the Top”という教育支援プログラム。アメリカ教育情報2011年4月1日号参照)、教育雇用基金から100億ドルが多くの州政府に供与されましたが、現在の残額は其々40億ドルと20億ドルとなっています。オバマ政権としては“Race to the Top”プログラムを継続する方針を持っていましたが、下院で多数を占める共和党の反対で、実行できる見通しはありません。

3.教育予算削減の影響。
(1)教育予算削減の直接的な影響
A.教員数の減少と質の低下
オバマ政権が導入した”Race to the Top”プログラムの実行のためには質の高い教員の採用、訓練、維持が必要となっていましたが、州政府の財政赤字は教育予算削減となり、多くの教育委員会で継続的な教員数の減少をもたらしています。また、同時に教員給与の削減も実施されており、質の高い教員の確保が難しくなっています。
B.小規模クラスの困難さ
教育の質を高めるには、低学年におけるクラスの生徒数を極力少人数にしておくことが必要とされますが、この調査に回答した教育委員会の約57%が2010-11年度においてクラスでの生徒数を増加させたとしています。また、2011-12年度においても約65%が生徒数を増加させるとしています。
C.授業時間や日数の減少
教育の成果を上げるには、一定の授業時間や日数が必要ですが、多くの州の教育委員会で削減措置が取られており、カリフォルニア州では41%の学校区で夏季授業の削減が行われています。また、2011-12年度については、17%の教育委員会が州の授業日数を週4日に減少させたり、夏季授業を削減する計画があるとしています。

(2)教育予算削減の間接的な影響
州の教育予算が削減される中で、シカゴ市を含む幾つかの市では財源不足を補う目的で、不動産税を引き上げる措置を取っています。また、ロサンゼルス郊外の幾つかの教育委員会では地区の公立学校教育の質的向上のために、不動産税に代わって区画税が導入されています(サンマリノ、パロスベルデス、サウスパサデナ、ラキャナダ等が実施したのに続き、アーケデイアでも新年度からの区画税の導入が検討されています)。また、一部の市では教育予算削減の影響を最小限にするために消防や警察などの市の別のサービス予算の一部削減を実行しています。

4.報告書を読んだ後の感想
米国の多くの州に見られる教育予算削減問題は州の財政赤字の恒常化にありますが、その根本的な原因を作ったのは、1978年にカリフォルニア州で導入された提案13号で、それ以降、レーガン大統領が唱えた“小さな政府”の発想が全米に強まったことにあります。しかしながら、同じレーガン大統領が進めた冷戦体制終焉によるグローバル化の影響が、やがて中国やインドと言った新興大国の台頭となって米国全体の競争力維持に対する大きな脅威を与えている時に、将来の社会インフラともいうべき公立学校教育において、著しい質的低下を生じさせている従来の“小さな政府”の政策を続けるべきなのかについては大きな疑問が生じます。

オバマ大統領による“Race to the Top”プログラムは州政府の財政危機状況の中で、連邦政府がイニシチアブを取って米国経済の再生を目指し、学校や教師のパーフォマンスの客観的評価の実施を前提に州政府への教育財源支援を行なうことで、公立学校教育の質的な向上を求めたものでした。しかし、2011-12年度以降は2010年の中間選挙で下院多数派となった共和党の反対で、このプログラムを続けられなくなっていることは米国における公立学校教育の将来を懸念させています。現在行なわれている共和党大統領候補者達の討論会でも、どの候補者も連邦政府による教育指導は間違いであり、教育省を廃止し、州政府に戻すべきことを主張しています。しかし、多くの州政府が財源問題から教育予算を一層削減しようとしている時に、州政府による公立学校教育の充実化は現実的には殆ど不可能な状況です。また、彼等の一部が提案するような米国民の自由な選択による私立学校教育の拡大もミドルクラスの収入が減少している現在の状況では保護者の経済的負担問題に直面します。

いずれにしましても、現在米国が置かれている状況を見ると、従来のような”小さな政府“を前提にする限り、公立学校教育の劣化が一層進むものと見られ、それを改めるには住民の政治志向を”低負担・低福祉“から”中負担・中福祉“へ転換し、既にロサンゼルスの一部地域で実施されているような住民自身の新たな税負担を通じて、公立学校教育の充実化を図っていくことが必要になっているように思われます。
                  (2012年2月1日: 村方 清)

Friday, July 1, 2011

私立大学化するカリフォルニア州立大学のビジネススクール














カリフォルニア州政府の財政危機は、これまで高い評価を得ていたUC BerkeleyやUCLAなどカリフォルニア州立大学のビジネススクールの経営にも大きな変化を起こさせています。6月27日付のCNN記事はUC BerkeleyのHaas Schoolの場合、2年間のMBAプログラムの授業料は2001年が19,996ドルであったものが、今年は86,396ドルで実に301%の増加となったことを伝えています。また、カリフォルニア州住民でない学生の場合には41,404ドルから100,356ドルへ142%の増加となりました。私立大学もこの期間に授業料を増加させましたが、増加率はStanfordが72.5%で、Harvardが79.6%に過ぎませんでした。10年前はカリフォルニア州住民である学生の場合、Berkeleyに行けばStanfordの授業料の31%でよかったものが、今は78%の負担を求められており、この状況はUCLAでも同様とされています。

これに対し、MBA取得後の給与はBerkeleyの場合、10年前の平均給与は85,000ドルでしたが、昨年は110,000ドルで、僅か29%の増加しかないとされています(また、求職期間も10年前は3ヶ月で決定できる学生の比率は98.5%でしたが、現在はリーマン破綻後の金融機関等の規模縮小が影響して、81%程度となっています)。Berkeley側は一流私立大学のビジネススクールの卒業生に比べ、平均給与において大きな違いがないにも拘らず、授業料はNorthwesternのKellogg Schoolに比べ20,000ドル、Pennsylvaniaの Wharton Schoolに比べ 27,000ドル安いのは、今でも魅力的であるはずと説明しています(US News & Word Report誌によれば、2011年の全米MBAプログラムのランキングで、Berkeleyが7位、UCLAが14位となっています)。

UCLAのAnderson Schoolは、現在全体予算の内、約17%が州政府からきていますが、理想的には州政府からの支援金を受けないことが望ましく、今後10年間でそうした状態に持って行きたいとしています。そして、現在得ている政府の支援金をUCLAにある財政不足のプログラムに回し、Anderson Schoolは授業料や寄付で賄い、財源面の柔軟性と安定性が確保を目指したいとしています(但し、Berkeleyの場合には、大学院のHaas School以外に、学部に350名のビジネス関係のプログラムを持っており、引き続き州政府の支援が必要となっています)。加えて、UCLAは今後3年間で、社会人のためのExecutive MBAプログラムを1つから5つまで増加させたり、現在サンフランシスコのGenentech社(ロス郊外にあるAmgen社と同じように、米国を代表するバイオベンチャー企業)向けに1社しかない顧客対応特別教育プログラムを数社に拡大させる計画を持っています。

いずれにしても、カリフォルニア州の財政危機は、高い評価を持ち続けてきたカリフォルニア州の高等教育にも大きな影響を与えており、特に、大学院のビジネススクールに関していえば、収入面で私立大学と同じような構造を持つことで、安定した財源を確保しようとしている州立大学が出てきていることは注目されます。
             {2011年7月1日: 村方 清}

Friday, April 1, 2011

”Race to the Top"ーオバマ政権の教育改革の現状と課題











オバマ大統領は、今年125日の一般教書演説で、世界市場の競争に勝ち抜くための科学と数学教育の充実を掲げました。既に、オバマ政権は2009724日に米国再建・再投資法の一環として、“Race to the Top”という名の教育改革法を発表、約4350千万ドルの予算措置を講じました。この背景にはブッシュ政権によって進められてきた“No Child Left Behind”政策が期待していたような実績を上げてこなかったという事情がありました。加えて、世界における米国の競争力がこのままでは一層後退しかねず、トップを目指す教育に目標を変えることにより、公立学校教育に具体的な成果を上げたいとの強い意向がありました。そして、予算措置の割り当てとして、以下のような4つの分野に評価の大きな基準を置くことになりました。
  1. 生徒が大学や職場で成功し、かつグローバルな経済の中で競争できるのに必要な基準や評価の採用

  2. 生徒の進歩や成功を計測し、かつ教師や校長に改善のためのあり方を示すデータシステムの構築

  3. 最も有能な教師や校長が必要とされる学校で、そうした人材が採用、向上、報奨、かつ継続できること

  4. 学力の向上が最も少ない学校の改善への転換

この中で、最も重要と見られるのは2にある生徒の向上のデータと教える側の実績に結びつける評価システムの構築で、これによりインセンテイブ(報奨)とサンクション(処罰)を客観的にしようとするものでした。そして、連邦政府は全米の州政府に上記の4つの基準に基づいて、政府の財源を優先的に割り当てることを通知、約40の州政府が申請を行ないました。結果を見ますと、第一回ではデラウエアとテネシーの2州に対して総額6億ドルが、第2回ではワシントンDC、フロリダ、ジョージア、ハワイ、メリーランド、マサチュセッツ、ニューヨーク、ノースカロライナ、オハイオ、ロードアイランドの10州に対して総額3325百万ドルの財源が割り当てられました。なお、財源不足が著しいカリフォルニア州は第2回の最終選考には残ったものの、新たな教員評価の設定面で、教員組合側の十分な協力が得られなかったこともあり、財源の割り当てを受けるには至りませんでした。

しかしながら、オバマ政権の“Race to the Top”政策には、幾つかの批判が出ていることも事実です。一つは教員組合からのもので、州政府が本来行なうべき教員評価の方法について連邦政府が共通の基準を設けることは、州政府に対する連邦政府の介入になるのではないかと言う指摘です(実際には、教員組合が強く反対する理由は連邦政府が求める教員評価には改善のない教員の解雇を含んでいることがあげられています)。もう一つは評価基準の妥当性で、ある州知事は自分達の評価基準は連邦政府の評価基準より優れたものであり、基準を変更するわけにはいかないということを理由に挙げていました。また、伝統的に共和党の考えが強いテキサス州は、州の教育内容を連邦政府の新たな方針に支配されたくないとして、最初から申請を行いませんでした。これに加えて、生徒のレベルを上げるには学校や教員の意欲や努力を評価するシステムだけでは十分ではなく、家庭で保護者が子供の教育環境をどのように整えるかも重要ではないかとの指摘も出されています(但し、この点については、オバマ大統領も教育改革に関するスピーチにおいて常に強調しています)。

いずれにしましても、カリフォルニア、ニューヨーク、テキサスを含め、現在多くの州が財源難に陥っている時に、財源支援を伴なう連邦政府の新たな教育政策はそれを受け取った州政府には大きなプラスになります。しかし、その一方、連邦政府自体が深刻な財政危機にある状態では、オバマ政権の財源支援を伴う教育政策もそれが一時的なもので終わってしまうという問題もあります(オバマ政権は2012年度予算で、”Race tot the Top“の継続のために約1350千万ドルの予算措置を講じていますが、共和党が多数派となっている連邦下院の状況もあり、それが承認される見通しは不透明です)。現在、米国のどこの州においても、教育予算は福祉予算と並んで最大の支出項目となっていますが、経済の低迷から州の税収増が期待できない以上(カリフォル二ア州は、これに加えて、1978年の住民法案13によって不動産税引き上げの制約が重なり)、州政府自身が費用と投資効果に基づき、採算性を意識した教育制度改革を志向せざるを得ない状況にあるといえます。

201141日: 村方 清)

JIPANGU

Tuesday, January 4, 2011

カリフォルニア州の財政危機と教育問題(”小さな政府”を求めた住民立法の矛盾)













経済力や人口の面で米国最大の州であり、国と位置づければ世界8位の経済力を持つカリフォルニア州が2000年代に入り、慢性的な財政赤字を抱えています。そして、長期にわたる財政収支の悪化は行政サービスの低下、特に教育予算の大幅な削減となり、従来米国の中で最も充実していた幼稚部から高校までの公立義務教育だけでなく、UCバークレーやUCLAなど全米で高い評価のある州立大学の高等教育や研究に深刻な影響を与えています。

カリフォルニア州の財源不足問題が行政サービスの中で、教育予算の大幅な削減をもたらしている背景には、1978年に州民発議によって教育予算財源を根本的に変えることになった法案13まで遡る必要があります。カリフォルニア州で、1960年代後半から1970年代後半にかけて問題となったのは、各カウンティーに属する各教育委員会の教育予算は、カウンティーの不動産保有税収入に大半を依存しており、不動産税収入の差によって各教育委員会の教育予算財源に差が生じていました。加えて、カリフォルニア州の人口増加は、各カウンティーにおける新設の学校や他の福祉サービスの増加を必要とさせ、この財源確保の必要性から市場価格に基づく不動産保有税の高い税率を住民に課しました。その結果、固定収入しか持たない高年齢のカリフォルニア住民の強い反発を招きました。こうした状況の中で、“小さな政府”を志向した2名の共和党員ジャービスとギャンが中心となり、州憲法第2条に基づき、不動産保有税に制限を加える州民発議法案13が用意されました。

この法案は本来カリフォルニアのカウンティー政府が決めるべき性格の不動産保有税を州民立法で変えるもので、1978年6月6日に投票者の約65%の賛成を持って成立しました。法案13はカウンティーによる不動産保有税の課税基準をその時の評価額の1%にすると同時に、年増加率を2%までに制限させるものでした。また、この法案には州税、あるいはカウンティーや市町村などの地方税の将来の変更に際しては、州民あるいはその地区の住民の3分の2以上の賛成が必要となるなど“小さな政府”を志向した住民の政治的権利を最大限確保した画期的なものでした。法案13はカウンティーの税収入額をそれ以前に比べ約60億ドルを減少させる(約57%の減少)と同時に、カリフォルニア州の一般教育財源をカウンティー政府から州政府に移すことで歴史的な転換点となりました。 また、この法案は1980年に当選した共和党のレーガン大統領の“小さな政府”の公約に結びつきました。

しかしながら、カリフォルニア州では1980年以降、頻繁に繰り返される米国不況はその度毎ごとに、個人所得税が全体の85%を占める州政府の所得税の減収となって現れ、州政府に依存する教育財源の不安定化が増すようになりました。こうした教育費支出の少なさを懸念したカリフォルニア教員協会、カリフォルニアPTA協会、カリフォルニア学校管理者協会などがスポンサーとなり、1988年に教育予算確保のための新たな州民発議による法案98が用意され、その結果、住民投票で約51%の賛成で成立しました。法案98は州の幼稚部から高校3年までの教育の無料化を保障するために、州政府に対して一般予算財源の約40%を公立教育予算に充当することを義務づけました。こうして法案98は全体としての公立教育財源を確保、教育予算の最低水準を保証させましたが、カリフォルニア州政府の一般税収が落ち込めば、教育予算への割当額が少なくなる状況に変わりはありませんでした。加えて、1990年から2008年までの義務教育対象人口は約140万人も増加しており、1990-91年度以降今日まで、カリフォルニア州の生徒一人当たりの教育支出は全米平均に比べ、年間1,000ドル以上少ない年度が大半となりました。長期間に渡る教育支出の少なさは、生徒の学業成績の結果にも現れ、2005年と2007年に実施された小学4年と中学2年の読解力、筆記力、数学、科学のいずれもカリフォルニア州が全米のボトム10%の州にまで低下する事態となりました。

こうした状況の中で、ロスアンゼルス市郊外のサンマリノ教育委員会は、その地区の優れた公立義務教育を維持するために、1991年に緊急対策として導入した区画税をカリフォルニア州政府の財政危機が深刻化した2003年以降頻繁に活用することになりました。サンマリノ教育委員会は既存の教育プログラムや教員確保のために、2003年3月に不動産区画税を導入、3回目として2009年5月5日に年間795ドルで6年間課税、但し、65歳以上の高齢者は除外することをいずれもその地区の投票者の3分の2以上の賛成で可決しました。このような動きは同じ地域にあるサウスパサデナ教育委員会やラキャナダ教育委員会でも起きており、6月から7月にかけて教職員維持や教育プログラム改善のための区画税を承認しました。しかしながら、カリフォルニア州全体では、区画税の新設による教育財源の確保については、2006年11月の住民投票で圧倒的な多数で否決されています。

住民立法による民主政治は住民の意思を直接に反映させる上で優れた政治形態であり、1978年に住民の多くが望んだ税負担の低減化による“小さな政府”という目的には極めて有効な政治的な手段でした。しかしながら、その一方で、現在カリフォルニア州のように、人口増に伴う教育や福祉等の行政サービスの増加に対する税の負担増については住民の考え方はあまりに多岐に渡っており、州民全体のコンセンサスが最も得にくい課題の一つになっています(昨年11月2日の住民投票では、州、カウンテイー、市町村が課すフイーの変更についても、投票者の3分の2の賛成が必要とする法案26が承認されています)。

こうした状況に対して、、昨年11月に州知事選挙で当選した民主党のブラウン知事が深刻化する財政危機について、従来のような応急措置ではなく、サービスの低下を受け入れるか、あるいは税負担の増加の二者択一しかないとしています。そして、今年3月には州民の、今年3月には州民の意向を問う新たな法案を用意するとしており、今後の展開が注目されています。


JIPANGU

Saturday, December 11, 2010

米国における生涯教育









社会の変化が大きく、またビジネスのスピードが速くなっている現在の状況では以前大学や専門学校で学んだことが陳腐化し、社会に出て就職した後、新たな知識や能力を再度身につける必要性が高まっています。私の場合、日本にいた時に、大学を出た後、市谷にあった上智大学の国際ビジネス学科や町の英会話学校へ通ったことはありましたが、いずれも英語や英会話の能力向上が中心であったように思います。しかし、その後30年以上生活することになった米国では仕事関連の分野だけでなく、趣味の科目を含めて多くのクラスを取ってきましたので、そのことを紹介したいと思います。

米国では幾つかの学校や組織が様々な科目を教えていますが、ロサンゼルスでは専門学校を除けば、UCLAのExtension Program、各地域のCommunity College、さらに各市のAdult School が代表的なものです。

最初にUCLAのExtension Programは、社会人を主な対象として平日の夜や週末に開かれています。科目はビジネス関連の会計、金融、コンピューター、建築、医療、不動産などに加え、趣味的な分野でもある美術、音楽、娯楽、語学など大変多様です。私がニューヨークからロサンゼルスに移った時は米国の銀行に勤めていたこともあり、管理会計のクラスを1年間取りました。日本の会計学の基礎的な知識はありましたが、米国では利害関係者への会計事実の開示義務が明確で、より厳しい会計ルールが適用されていることを知りました。また、ある時期には国際ビジネス関係のクラスが幾つか開かれており、自分のビジネス経験を踏まえ、外国人を含めた他の社会人達との議論を楽しんだこともありました。ただし、Extension Programの授業料は州立大学であるUCLAの一部でありながら、社会人が主な対象であるために高かったように思います。

一方、各地域のCommunity Collegeは2年間の短大の性格を持っており、履修者は4年制の大学へ入学できなかった学生が多く、3年次に4年制大学へ編入するために必要な教養課程の単位取得を目指しています。しかしながら、夜間は昼間働いている社会人のための科目も多く、私は米国株式投資のクラスやカリフォルニア州の不動産ブローカーライセンス取得に必要な8科目をPasadena City Collegeで取りました。Community Collegeの授業内容や成績評価は主な対象が大学生であるため、UCLAのExtension Programより厳しく、テストだけでなく、授業への議論参加度合いも成績評価の対象になっています。その他、Pasadena City Collegeでは語学関係の科目も多く、私の場合、スペイン語、中国語、イタリア語のクラスを取りました。しかし、漢字に共通性のある中国語を除けば、時間的な制約もあり、身につかなかったように思います。なお、Community Collegeの授業料はカリフォルニア州の居住権があると極めて安いのが特徴です。


以上は大学関係でのプログラムでしたが、各市が運営しているAdult Schoolも実務や趣味に関係したクラスを開いており、役に立ちました。特に、私の場合、コンピューター関係のクラスはWord、Excel、Power Point等の科目をAdult Schoolで取りました。また、市が運営しているため、授業料は極めて安く、懇切丁寧に教えてくれるのが特徴です。

最後に、専門学校ですが、語学だけでなく、自分の仕事に直結する科目を教える専門学校も少なくありません。私の場合、カリフォルニア州の不動産ライセンス(セールスパーソンとブローカーの2種類)を取るために、不動産の専門学校に行きましたが、テスト合格のための実践コースであり大変有益でした。なお、日本から米国への不動産投資が盛んな時に、日本でカリフォルニア州の不動産セールスパーソンライセンスが日本で取れるようなプログラムをカリフォルニア州の不動産専門学校との間で設立したことがありましたが、日本の米国向け不動産投資ブームが去った後はそのプログラムは無くなってしまいました。専門学校の授業料は大学や市が運営しているプログラムに比べ、どうしても高くなります。

こうして、ロサンゼルスでは幾つかの大学や組織が生涯教育に必要な様々な科目を教えていますが、最初の3つについては、カリフォルニアにおける州政府や市が抱える大きな財政赤字のために、最近では教える科目を減らしたり、授業料を上げているところも少なくありません。この点、カリフォルニア州が財政赤字を早めに立て直し、従来あったような生涯学習に必要な多様な科目を、安い授業料で再び教えてもらいたいと思っています。


JIPANGU

Monday, October 18, 2010

米国の大学留学と社会体験の奨め














ここ4,5年、米国に留学する日本人学生の数が著しく減少してきているといわれています。それに引き換え、中国、韓国、インドからの米国への留学生は急増しているようです。

日本人留学生が減少している理由の一つは、日本の就職活動が年々早くなり、今では3年生の秋学期から始まるため、留学することが不利になるとの判断があるようです。もし、そうであれば、受け入れる企業側で選考時期の検討が必要であるように思います。2年間の教養課程を修了しただけの学生に試験や面接をしても、学生の能力について十分な評価はできないと思います。加えて、今のようにグローバル化の波が急速に進んでいる時に必要とされるのは、専門知識をベースとした異文化コミュニケーション能力であり、企業側も学生にはそうした機会を極力得てくるように奨励すべきと思います。やはり、受け入れる企業側は学生には就職活動の前に大学で十分勉強してもらうべく、選考時期については以前あったように4年生の秋以降に行なうのが適切であるはずです。

米国への留学生が減少している他の理由は、日米間の経済格差の縮小や情報コミュニケーションの発達もあり、米国で学ぶことが少なくなってきているといわれています。確かに、ここ30年近く、米国へ留学し、日本へ戻った教授や研究者の数が大変多かったことからすれば、米国の大学で教えられている専門科目の内容は日本の大学でも多くが取り入れられています。しかし、米国の大学で教えるのは取得した知識を使って実際の社会の問題に対応できる能力を育てることであり、そこでは社会での新しい動きに応じて、教える内容も常に変化していく性格を持っています。私は30年以上も前に米国の2つの大学院で学んだことがありましたが、日本の大学で始まったばかりの国際関係論の学問が米国の多くの大学で既に一般化されていました。特に、私が強い興味を持っていた国家間の経済的利害関係が与える国際政治への影響について、体系的に学ぶことが出来たことは大きな収穫でした。恐らく、そうした米国の大学の特徴は、今でも変わっていないはずで、基礎的な知識を積み上げながら、より複雑になった内外の社会問題に取り組んでいると思います。この点、米国の大学への留学は日本人の学生にとって、依然大きな刺激になると信じています。

加えて、米国の大学の魅力は専門分野の問題を担当教授の指導の下に、同じクラスの学生達と議論しながら、自分の意見をまとめ、相手に伝えていく能力を養うことにあります。米国の場合、クラスにいる学生のバックグランドは多岐に渡っており、そうした学生達の間で自分独自の意見を上手に伝えていくためには、語学の訓練と同時に、論理的な思考方法が必要になります。こうしたことは日本ではあまり経験しないために、最初は苦痛になりますが、何度か繰り返すと次第に慣れてくるように思います。私の場合、米国で日本企業の駐在員を辞めた後、米国大手銀行のニューヨーク本店とロサンゼルス支店に10年ほど勤務しましたが、社内のコミュニケーションの上で、米国の大学に留学した経験が大変役に立ったことは言うまでもありません。当時と比べ、日本の企業も米国の企業もビジネスのグローバル化がはるかに進んでいますので、こうした米国の大学での経験は異文化コミュニケーション能力を高めることになり、大きなプラスになるはずです。

最後に、米国の大学への留学と並んで、絶えず進化する米国の社会を体験することも重要であると思います。私の場合、米国で不動産プロジェクトにも多くの関わりを持ち、特にショッピングセンタープロジェクトではニューヨークとシカゴで米国のパートナーと一緒に開発プロジェクトを進めたこともあり、随分勉強させてもらいました。1980年代前半までは大きなデパートメントストアが中心のテナントであるショッピングセンターが一般的でしたが、そこに家族が一緒に楽しむ場所として、フッドコートや映画館のようなエンターテイメントの要素を加えたり、屋内に小型遊園地を備えたミネアポリスのMall of Americaのような大規模ショッピングセンターが現れました。また、1980年代後半の米国不況期には、工場跡地を使ったファクトリーアウトレットモールが全米各地に建設されました。日本でも、様々なショッピングセンターがオープンしていますが、その大半は米国のショッピングセンターを模倣したものが多いように思います。今、私が注目しているのは、数年前にオープンしたロサンゼルスの北部グレンデール市にあるAmericanaという複合プロジェクトで、デパートメントストア、多くの専門店、ライブラリーを思わせる大手のブックストア、ホテル、大きな噴水や乗り物などのエンターテイメントなどに加えて、高級なコンドミニアムがあり、衣食住の全てをそろえたプロジェクトになっていることです。こうした新しいタイプのショッピングセンターの発展を見ることができるのも、米国の魅力の一つになっていると思います。

いずれにしても、米国は世界の多様な人種の人達がミニマムの規制の中で、自由かつ創造的に様々な試みをしている国であり、今後も世界をリードする学問や社会のトレンドを作り出していくはずです。この点、日本の若い人達には是非海外、特に米国に留学し、多くのことを学んで欲しいと思っています。




JIPANGU